明治期の日本は、近代国家として西欧列強に渡り合うための海防力を備えることが急務であった。

このため、国家プロジェクトにより天然の良港を四つ選び軍港を築いた。

静かな農漁村に人と先端技術を集積し、海軍諸機関と共に水道や鉄道などのインフラが急速に整備され、日本の近代化を推し進めた四つの軍港都市が誕生した。佐世保はその一つである。

百年を超えた今もなお現役で稼働する施設も多く、水道インフラはその最たるものである。

文化財の紹介

岡本水源地

1900年(明治33年)竣工、岡本水源地。

明治初期、大日本海軍鎮守府は組織が大きくなるにつれ、真水の水源を確保すべく候補地を探していた。

最終的に選ばれたのは、山深くにある溜池。

農業用溜池を改修して完成したのが、大小2つからなるこの貯水池。

建造の指揮をとったのは日本近代水道の父と呼ばれる海軍技師・吉村長策。

岡本水源地の完成により、住民も清潔な浄水を利用できるようになり、水に関する問題が改善されていった。

山ノ田水源地

1908年(明治41年)竣工、山ノ田水源地。

明治期に造られた、ろ過水槽・ろ過の際使われた砂を保管する砂場・隧道など貴重な建築物が遺されている。

山ノ田水源地の完成後、多くの庶民に浄水が行き渡るようになった。

水道管を使用した水は、産業の活性化など街の発展にも大いに貢献した。

その後100年以上に渡り幾度となく改良が重ねられ、今なお人々に潤いを提供し続けている。

菰田貯水池

1940年(昭和15年)竣工、菰田貯水池。

水を堰き止める堤体は重力式コンクリート造り、その高さは40m、堤体長は377.8m。

年月を経てもなお威厳に満ち、堂々とそびえる姿が印象的。

佐世保市の水道用ダム群で最大の規模を誇り、完成から80年以上過ぎた今でも朽ちることなく静かに水を貯め続けている。

堤体頂上の天端や地上から隧道に入る門には、昭和初期ならではのモダンな装飾が施されており、風情ある造りとなっている。

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